カスレ 〜再チャレンジ〜
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2018年12月17日 月曜日
先月、始めてのカスレ自作に挑戦し、白インゲンが固すぎてちょっと失敗作でした。その後、nicoに行ってプロのカスレを食べながらのUシェフからのアドバイス。
1)あの写真のカスレ(1作目のこと)は水気が少なすぎる。
2)白インゲンはやはり下茹でした方が良い。
3)コンソメ、ブイヨンなどは使わない方が良い。
(鴨肉他から十分旨みが出て来るので。)
以上を踏まえ1ヶ月のブランクを経て昨日の日曜日、自宅で2作目のカスレに挑戦しました。
まずは食材確保に昼過ぎ高島屋のデパ地下へ。日曜日の昼は比較的客の数が少なくてほっと安心。(私、デパ地下の人混みがかなり苦手なのです・・・)最初に鴨肉を購入。これが無ければ美味しいカスレが出来きませんからね。ネットから印刷したレシピによると、もし入手できればオリーブオイルよりグース・ファットを使うと旨みが出ると書いてあったので、鳥肉専門コーナーの店員さんに尋ねましたが『いやあ、うちには置いていません。』とのこと。やっぱりグース・ファットはプロ用食材で流通√、あれっルートが違うのかなと。ほかに豚肉、ベーコン、玉葱など普段常備していない食材も買って帰宅。帰宅したらすぐ豚肉に甘塩をたっぷり擦り込んで冷蔵庫で3時間寝かします。乾燥白インゲンを水に浸してから、さて3時間ほど暇だから何をしようかと・・・
そうだ、しばらく行ってなかった近所の中古レコード店に行って見よう。またいろいろ入荷しているかもしれないし、ちょっと期待しつつ店のドアを入るといつものオッちゃんが山積みになった未整理LPレコードの山の向こうのレジで「ああ、どうも」。互いに名前は知りませんがオッちゃんに顔を覚えられています。店内はLPレコードの棚や段ボール箱が所狭しと並んでいて、クラシックのコーナーに辿り着くには、店のドアから逆S字型の細い通路(通路と行っても幅数十センチで、場所によっては体を横に向けて蟹歩きしないと奥に進めない“段ボール峡谷”もある)を進まなければいけません。この店が好きなのは他の中古レコード店より価格が安いことと、何より音盤の音質、傷の評価レベル(高評価から順にS(新品同様)→A(高音質)→B(キズあり)→C)の✓が良心的という点。(他の店ではあまり良心的な✓で無かったり、価格が高かったりします。)ただしこの店のクラシック・コーナーは作曲家別でも演奏形態別(管弦楽曲とか器楽曲とか声楽曲とかいったように)に分類されずにダーッと棚と箱に入れてあるだけなので、結局置いてあるLPを一枚一枚指で繰って行きながら全てチェックするという“客の努力”が求められる店なのです。(だから安い!)その中でめぼしいLPを見つけたらそれを取り出してどこか店の空いてそうなスペースに格納して作業が大体2時間かかります。この作業をしながら「う〜ん、何かに似ているなあ・・・」そうだ、ウイルスチェックソフトのハードディスク・スキャンみたいです。ほぼ2時間、ノートンやマカフィーのPCソフトみたいウイルスならぬお宝検察に徹して、店内のクラシックLPを全スキャンするので結構疲れます。それでもちょっと久しぶりに来店したので、めぼしいLPを20枚程度見つけました。コリン・デーヴィス指揮のヘンデルのメサイア(LP3枚組)のS+A評価のものが1,500円。クリスマス前ということでもないですが、これはラッキーな買い物したなとニンマリしてつい疲れも忘れてしまいます。
スーパーもマイ・バック持参が推奨される昨今のエコ状況。中古レコード店も然もありなんとて、高島屋の手提げ紙袋を持参したものの20枚以上のLPを入れるには「ほら、破れまっせ。袋二つにせんとあかんのちゃいますか。」と、オッちゃんがレジの横から高島屋の紙袋をもう一つ取り出してくれました。「500円、引いときます。」いつもまとめ買いの常連客なので、毎回こうやって何百円かまけてくれる。雨がパラパラ降っていて傘をさしてきたのを察してくれているのでしょう。両手で紙袋を持って店を出る私に「足下気い付けて、お帰り下さいな。」と声をかけてくれる。京都人の優しさを感じます。この中古レコード店のオッちゃんも、たまに訪れる寺町の和菓子屋の番頭さんみたいに奥で座っているおじいちゃんもそうですが、商売スマイル一切無く淡々と素で客に接して適度な距離を保ちながら実は客のことを常に気遣ってくれている。そんな京都人が好きです。
で、そろそろ塩漬け豚肉の3時間の寝かせが完了するので、水に浸した白インゲンを今度こそは柔らかくホクホクにしてやろうと圧力鍋に入れて煮ます。圧力鍋だから10分も煮込めば十分だろう。そうそう。料理しながら買ってきたLPを聴こうと、キッチンの隣のオーディオルームでまずは一番目立つ赤いジャケットのLPを取り出しました。このLPのブラームスの交響曲第1番を指揮しているボールト(Sir Adrian Boult)というイギリス人指揮者、以前ラジオか何かで耳にして気になっていたのですが、LP・CDとも1枚も持っていなかったのです。それに私はブラームスの4つの交響曲のうち、どれが一番好きかと言えば第3番でクルト・ザンデルリンク指揮/ドレスデン・シュターツカペレの演奏が“決定版”との思い入れがある中、第1番はまだ決定版に出会っていませんでした。(ザンデルリンク、コリン・デーヴィス、カラヤン他・・・それぞれに好きではありますが)それが今日たまたま500円で買ったこの中古LPの演奏が凄かった。第1番はブラームスが着想から21年もの歳月をかけて完成した4曲中もっとも男性的な大曲ですが、この演奏は惚れ惚れするほど男っぽい。1972年に録音されたこの演奏は腕力ではなく精神の逞しさと男性的な情熱がストレートに伝わってきて、第1楽章からこれぞ“ブラ1”と感じたのです。ところが、ジャケットの裏面の解説文を読んでさらに驚嘆!この演奏でコンサートマスターを務めている(第2楽章のヴァイオリン・ソロの部分も弾いている)のは、あのユーディ・メニューイン!音楽評論家の出谷啓さんの筆によるジャケット解説文にはこう書いてあります。(以下、引用)

ボールトの円熟を物語るエピソードが、このブラームスの交響曲第1番をとおして残されている。ヴァイオリニストのメニューインが、ボールト指揮ロンドン交響楽団とブルッフの協奏曲2曲を録音したとき、そのつけの余りの見事さにすっかり感激したメニューインが、「マエストロ、今度何かあなたがシンフォニーを録音するとき、ぜひ私をオーケストラの一楽員として傭って下さい」と申し出た。そこで実現したのが、このブラームスの交響曲第1番で、メニューインはこの曲の有名な第2楽章のソロ・パートを独奏したほか、終始コンサートマスターの席にすわって、老巨匠のセッションに奉仕したという。これはイギリスの高名な音楽評論家エドワード・グリーンフィールド氏が、米ハイ・フィデリティ誌の「ビハインド・ザ・シーン」というコラムに、リポートしていたものだが、出来上がったレコードのレーベルには、何のクレジットもされていない。これがイギリス流の奥床しさ、というものだろうか。
素晴らしい。ほんとうに素晴らしいBrahms Symphony No.1だ。あっ、白インゲンが圧力釜の中に!LPのA面の2楽章を聞き終えて既に25分が経過。白インゲン煮すぎたかも・・・。圧力釜のガスの火を消して30分ほど冷ます間、まっええか。B面も聞いちゃえ。と3楽章、4楽章も聴く。素晴らしい。かっこよく上手く聴かせようなどとは無縁の、ストレートで熱くて洗練された豊かなブラームス。ついに“ブラ1”の決定版に出会えました!
圧力鍋のシューという音が消えて静かになったので、恐る恐る蓋を開けて中身を笊に移すと、あ゛〜〜 白インゲンが崩れてるぅ\(◎o◎)/! ホクホクを通り越して、トロトロの下茹で状態になってしまいましたぁ。まあ仕方ない、決定版ブラ1に出会えたんやし、と割り切って次に進む。鴨肉と豚肉をオリーブオイルで炒めて取り出し、次にスライスした玉葱とベーコン、ソーセージを炒めて、それをまた圧力鍋に入れて予め買っておいたトマトピューレを一瓶全部入れて、オレガノとタイムとローリエ2枚を入れて、トロトロがせめてドロドロにはならないように5分だけ煮込みました。再度、圧力鍋のシューという音が消えて静かになってから、忘れずにローリエを取り出し(1作目は失敗してそのままオーブンに入れてローリエの黒焼きにしてしまったので・・・同じ鐵は踏まず)、ダッチオーブン鍋に移しちょっとだけパン粉を振りかけて(糖質制限中なのでちょっとだけ)オーブンで焼くこと10分。オーブンから取り出してパセリを振りかけ、思いつきで冷蔵庫にあったブラック・オリーブのスライスをパラパラ撒いてカスレ第2番、じゃなくてカスレ第2作目完成 \(^O^)/ブラボー

さて、お味は。うーん、結構いい出来です。少なくとも第1作目よりは進化して、白インゲンもホクホクとは行かなかったけどトロトロ止まりでドロドロにはならず、なんとか踏ん張ってくれました。うーん、やっぱりカスレには赤ワインが合います。nicoのシェフがカスレにはピノノワールのような軽めで繊細なタイプではなくて(カスレに負けてしまうらしい)、しっかりした重い味の赤ワインが合うと言っていたので、KALDIで買っていたメルロー種のワインで頂きました。カスレ2作目もほぼ半日仕事でした。

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