漢方から見たチョコレート
2011年7月13日水曜日
当院を受診される患者さんは女性が多いのですが、40歳代までの方はチョコレートが好きな人が実に多いですね。患者さんの初診の時には漢方処方のことだけでなく、個々の患者さんの体質に合わせた養生法をアドバイスしています。その時に、よく食べたり飲んだりするものを問診票に書いてもらったり尋ねたりします。チョコレートもよく話題に出てくる食べ物です。
食べ物は多かれ少なかれ漢方薬学的な性質の「偏り」を持っています。その「偏り」が患者さんの体質によってはお薬にもなり、また毒にもなるのです。特にチョコレートを避けて頂きたい患者さんがいます。アトピー性皮膚炎の患者さんです。特に顔面、首や頭皮といった体の上部に赤みや痒みがある人は、是非ともチョコレートは避けるようにお勧めしています。
チョコレートは漢方薬学的に見ると、気を「陽の方向」に集める性質を持っています。「陽の方向」とは具体的には二つあります。一つには体の上部(顔面、首、頭、上胸部や上背部)、もう一つは体の表面(つまり皮膚)です。アトピーだけでなく他の皮膚病でも、皮膚に炎症があるということはその部位に邪熱や湿熱が欝滞していることを示しています。その部位に気が集まるとさらに熱化して炎症に拍車がかかるのです。実はチョコレートほどではありませんが、コーヒーにも同様の作用があると考えています。これは漢方の教科書には書いていることではありませんが、ずっと患者さんを診察してきて体得してきたことです。チョコやコーヒーを避けることだけで痒みが軽減したという患者さんは少なくありません。(しかし、「チョコはやめたほうが良いですよ」とお勧めすると皆さんガッカリした表情されるんですよね・・・)
しかし、チョコレートは別の患者さんとっては薬膳としても使えるものなのです。つまり、普段から気が「陰の方向」に留まってしまっている体質、例えば立ちくらみ、低血圧、朝起床がつらくて食欲が出ない、といった症状の方です。中医学では気陥証とか脾気不昇と言います。このような方には気を陽の方向(この場合は上方向に)に向けてあげることが役に立つのです。この作用を益気升提(えっきしょうてい)と言います。ですから、このような患者さんには益気昇提の漢方処方の他に、毎朝(朝が良いんです)小さいチョコを1、2個食べるようにお勧めしています。(この時は、患者さんは嬉しそうな表情をしますね・・・)
薬食同源といいますが、チョコレートも例外ではないんです。