薬用植物見学
2011年6月26日日曜日
京都の修学院離宮や曼殊院の傍にある武田薬品の京都薬用植物園に漢方仲間と行ってきました。 梅雨の最中でしたが、ちょうど曇りで暑い日差しもなくて良かったです。
左の写真はセミナーハウスの前にあるヒポクラテスの木です。ギリシャのコス島の町の中央にあるプラタナスの木の下で、昔医学の父ヒポクラテスが生徒に医学を教えたそうです。そのプラタナスが今も残っているそうで、写真の木はギリシャ政府の許可を得て、分けてもらったのだそうです。
右の写真はキバナオウギです。薬用部分の根は黄耆(オウギ)として補気(気を補充する)の代表的な生薬です。朝鮮人参も補気の生薬ですが効き方が全く異なります。黄耆は体の中の気を体表や手足の末梢部分に供給する働きがあります。特に気を上方向に持ち上げることがありますから、立ちくらみや低血圧の患者さんにはよく使用されます。補中益気湯や昇陥湯が代表的な処方です。
黄耆はマメ科植物です。葉っぱの付き方が葉軸から左右に小さい葉が並んでいるのはマメ科植物の特徴です。
左の写真はウスバサイシンです。薬用部分の根は細辛(サイシン)として、肺を温めたり、冷えが関連する頭痛や神経痛を治します。
この植物の地上部にはアリストロキア酸という腎毒性物質が含まれていますから、日本薬局方では根のみを使用することと規定されています。無数の細い根っこは噛むと辛い味がするので細辛(細くて辛い)という名前がついています。
この葉っぱ、京都の人ならどこかで見たような〜。そうです!葵(フタバアオイ)の葉っぱとそっくりです。京都の賀茂御祖神社(下鴨神社)と賀茂別雷神社(上賀茂神社)で行われる葵祭で、行列の人々や牛車などが葵で飾られます。実は細辛と葵は同じ仲間の植物なのです。似てて当然なんです。
左はナツメの花です。とても小さく可愛らしい花です。(下に拡大写真)まだ実はなっていませんでしたが、ナツメの実は大棗(大棗)として生薬になります。
補気や安神(精神を安定させる)の代表的な生薬です。精神安定という目的では甘麦大棗湯という処方に用いられるので有名です。
右の塊はマツホドという 松の根っこに寄生する 茸の一種です。この断面は白く、茯苓(ぶくりょう)という生薬になります。茯苓は体の中の水の分布の偏りを改善する代表的な生薬です。
下の写真を見ると、松の根っこがマツホドの塊の中に入り込んでいるのが分かると思います。地面の下にある茯苓を見つけて掘り出すのは経験がいる作業です。
左の写真はベニバナです。昔の口紅の材料です。紅花(コウカ)として活血調経(血液の流れを改善したり、月経を整える作用)の生薬として利用されます。
元気よく咲いている花は黄色く、時間がたって紅くなっているものもあります。口紅に使うときには集めた紅花を突き固めて発酵させて真っ赤に変化させます。
漢方薬とは関係が無い植物ですが、右の写真はバニラの実(中に種を含んだ鞘)です。植物学的にはランの仲間です。熱い地帯の植物ですから、温室で育てています。
そのまんまの実にはバニラの香りはありません。この実を採取して、蒸して発酵と乾燥という工程を加えることで、写真右のように褐色に変わって初めてあの美味しそうなバニラの香りが生まれます。
いやぁ、植物観察って本当にいいもんですね~
武田薬品京都薬用植物園は普段は我々のような医療関係者や医学・薬学生の研修目的に見学させて頂いているのですが、植物園の方のお話しでは年に6回ほど一般公開しているそうです。事前に申込みが必要で定員もあるようですから、見学に行きたい人は下のホームページをチェックして下さい、とのことでした。
武田薬品京都薬用植物園
http://www.takeda.co.jp/kyoto/visit/index.html