研究室の紹介
2011年5月1日日曜日
去年の12月の診療所オープン以来、何かとやることが多くて、研究室と図書・資料の整理がなかなか進んでいませんでしたが、やっと片付きました。図書や資料も分類していつでも使える体制が整いました。
当院はビル5階のワンフロア全部を借り切っています。32坪あるのですが、その3分の1はこの研究室兼図書室が占めています。北側の七条通に面した患者さんの待合の反対側、テナントの南側にありますから、待合からはほとんど見えません。
患者さんがこの研究室に出入りすることはありませんので、このブログで御紹介したいと思います。
研究室の入口のドアです。待合から覗けるのはここらあたりまでだと思います。
入口を入ると両サイドに高さ210cmの書棚があります。
左側は主に室町時代〜江戸時代の日本の漢方書籍です。
入って右側の棚は、主に学生時代に使っていた教科書やノート、プリントです。当時は学生オーケストラの方に熱心であまり勉強していなかったと思っていましたが、ノートを見返してみると結構勉強したんだなあと感じます。
研究室の机です。中学生時代に親に買ってもらったスピーカー(Technics)をサイドテーブル代わりに使っています。昨今は”ダンシャリ(断捨離)”がはやっているようですが、長いこと使ってきた愛用スピーカーは音がちゃんと出なくなっても愛着ができてなかなか捨てられません・・・
机の上にはパソコンが3台。右はWinマシン、真ん中がiMac、左は電子カルテ端末です。資料作成やインターネットはiMacを主体に時々Winを使います。
電子カルテはLANで診察室や事務室のサーバーに繋がっていますが、患者さんの個人情報がハッカーに狙われたり流出したりしないように、インターネットには繋げていません。朝や夜にこの電子カルテを立ち上げて、難しい病状の患者さんの治療戦略を立てています。その時に研究室の蔵書やiMacが活躍します。
以下は研究室の蔵書です。棚ごとに分類して、情報までのアクセス時間を短縮し、患者さんの診療に必要な情報に早くたどり着けるようにしています。
(書棚が地震で倒れてきたら、自分が研究室に閉じ込められてしまいますから、天井に支え棒をしています。)
中医学の専門書は分厚い物から、薄っぺらい物まで様々です。薄っぺらいものは背表紙が付いていませんから、パソコンで小さい文字で自作して貼り付けて、左の写真のように分類しています。最近の中医学は、西洋医学のように消化器病とか脳神経病とかいうふうに細分化してきています。一方で、新安医学とか火神派とか金元医学といったように伝統的な中医学の流派別の書籍も沢山あります。
専門書はちゃんと整理していないと使えないタダのかさばり物になってしまいますから、整理整頓は必須です。
医論とは治療や診断の理論を解説したものです。唐代~宋代~金元代~明代~清代~近代~現代と、時代ごとに整理しています。
簡体字で薄っぺらい装丁の本が多く、背表紙はパソコンで自作しました。
こちらは大型の書籍です。本草綱目や景岳全書など、重要な医書の他に、珍本というちょっとマイナーな書籍集もあります。
右下は工具書といって、古い文字や語彙、医籍を調べる一連の書物です。すぐ手が届くところに並べています。漢方の研究は漢字との格闘ですから・・・
こちらは薬学(生薬学)関係の大型書籍の棚です。右側に見える中薬大辞典というのが、現代中薬学でオーソリティーのあるものです。生薬は時代や地域によって呼称が異なることも多いため中薬別名速査大辞典なども調べます。生薬の加工方法(炮製)に関する専門書もあります。
こちらは傷寒(上段・中段)と温病(下段)に関する小型書籍の棚です。傷寒と温病はともに外感病といって、現代医学的に言えば感染症に関する漢方診療の書籍です。
1800年前の傷寒論がバイブルですが、その後も時代を経ながら発展し、明代~清代にかけて温病学という温熱性の外感病の治療方法が発展していきました。
患者さんがカゼをひいて受診されたときには、先ず傷寒か温病か、漢方医の頭の中では思考が始まるのです・・・
この研究室は当院の頭脳です。
これからも漢方診療の高みを目指し続けます。