秋のカゼ 冬のカゼ
2011年10月14日金曜日
朝は肌寒く感じるカゼの季節になってきました。カゼの治療は漢方の歴史とも深く関わっていて、1800年ほど前に書かれた傷寒論(しょうかんろん)という漢方医学のバイブル的な書物にはカゼの処方や治療方法がたくさん書かれています。皆さんもよくご存じの葛根湯(かっこんとう)も、この書物に記載されている処方です。そもそも「傷寒」という言葉が「寒さに傷(やぶ)られる」、つまり寒冷の邪気に身体が傷害されるということに由来しています。
冬のカゼ
冬のカゼは特に寒冷が原因になります。これを寒邪(かんじゃ)と言います。寒邪のカゼの特徴は悪寒が強いことです。普段元気な人でも、急にゾクゾクっと寒けがして、そのうちに頭痛や節々の痛みを感じるようになります。
これは典型的な傷寒の初期症状で、葛根湯や麻黄湯といった漢方処方を早期に服用すると早いときは数時間で発汗と共に治ってしまいます。普段から冷え症がある虚弱体質の人には、葛根湯や麻黄湯は適切ではなく、麻黄附子細辛湯といったような処方で治療しなければいけません。
秋のカゼ
秋のカゼはしばしば乾燥が原因になります。これを燥邪(そうじゃ)と言います。燥邪のカゼの特徴は、喉や鼻腔の渇き、空咳といった乾燥症状が前面に現れることです。五臓のうち特に肺とその関連部位(鼻、喉)に乾燥症状が現れやすいのです。陰陽五行(木火土金水)説では秋という季節は”金”に属しますが、人の五臓(肝心脾肺腎)では肺が”金”に属します。ですから、秋の乾燥の影響は肺に現れ易いのです。燥邪によるカゼには麦門冬湯(ばくもんどうとう)、滋陰降火湯(じいんこうかとう)、滋陰至宝湯(じいんしほうとう)などで治療します。いずれも健康保険が使える漢方薬です。
漢方のカゼの治療は、一部の例外を除いて西洋医学の治療よりもずっと効果的な場合が多いのです。