漢方で抗生物質の使用を減らす
2011年6月21日火曜日
漢方を専門にしているとはいえ、最新の現代医学の本や雑誌もよく読みます。今朝は研究室で、最近買った小児感染症の本を読んでいました。
漢方医が西洋医学の薬の勉強をするとは、ちょっと意外に思われるかもしれませんが、現代社会の中で医療を行っている限り、現代医学についての新しい知識と無縁ではいられません。少なくとも、西洋医学のそれぞれの専門分野の医師とディスカッションできるだけの知識は持っていないといけないと思うのです。
カゼや気管支炎、膀胱炎など日常診療でよく見かける感染症に対しては、当院ではほとんどの場合抗生物質を使わずに漢方薬のみで治療しています。しかし、糖尿病や喘息など基礎疾患のある患者さんは、細菌やウイルスに対する抵抗力が十分ではありませんので抗生物質の使用を躊躇してはいけないこともあります。現代の医療現場では抗生物質は無くてはならないものですが、抗生物質の安易な使用は、逆に抗生物質が効かない耐性菌を作ってしまう恐れがあり、腸内細菌叢(腸の中で人間と共生している正常な細菌)を乱してしまいます。 ですから、 可能な限り抗生物質は使用しないように配慮しています。
一般的なカゼや気管支炎、膀胱炎などは的確な漢方治療を行った方が、抗生物質を使用するよりもずっと効果的です。なぜかというと、咽、肺、膀胱、皮膚などの感染の部位によって生薬を使い分けること、また患者さんの体質や体調あるいは季節・天候によっても生薬の種類や量を変えること、袪邪(病邪を去ること)だけでなく扶正(正気を補う)することも考えて生薬を配合すること、などが総合的にプラスに働くためだと思います。ただし、直接細菌やウイルスを叩く力は抗生物質や抗ウイルス剤には適いませんから、臨機応変に抗生物質を使用することも重要なのです。