京都・漢方専門クリニック 

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不明熱(微熱)

ここでは原因のはっきりしない発熱(不明熱)の漢方医学的な病態と治療について解説します。

A306_005.jpg カゼなどのウイルスや細菌の急性感染による発熱は日常よく経験されます。しかし、膠原病の勢いが強くなっている時や癌や白血病、悪性リンパ腫といった悪性腫瘍でも発熱することがありますから、発熱が続く場合はまず西洋医学的なチェックを受ける必要があります。ところが中には、西洋医学的に十分な精査を受けても発熱の原因が分からなかったという患者さんもいらっしゃいます。

 中医学では発熱を外感発熱と内傷発熱に大きく分けます。外感発熱は風邪や寒邪など風寒暑湿燥火の六淫(りくいん)の邪気が、季節や患者さんの体調によって外から入ってきて発熱をはじめとする様々な症状を起こすもので、多くは急性発熱です。いつまでも発熱を繰り返す不明熱の患者さんの多くは内傷発熱です。内傷発熱は外から邪気が入って引き起こされるのではなく、体内の陰陽失調や気血津液の不調和に由来するものです。内傷発熱にもいくつかの類型(気虚発熱、陰虚発熱、肝鬱発熱、等々)があり発熱の病態も治療も患者さんによって異なります。

 比較的よく見られるのは気虚発熱と陰虚発熱です。気虚発熱は主に脾気の低下のために人体の火力(中医学では命門相火と呼んでいます)の調節ができなくなり火の暴走として発熱や身熱感のような熱証を呈する病証です。疲れると発熱する胃腸虚弱体質の患者さんに多く見られます。補中益気湯を中心とした健脾昇清の処方で脾気を高めることで相火の暴走を鎮め、結果的に発熱を治します。この治療法と処方は、約800年前の金代の名医である李杲(李東垣)によって提唱されましたが、現代の漢方治療でも応用できる有用な方法です。

 陰虚発熱の患者さんもいらっしゃいます。夕方から夜に身熱感と発熱が起き、朝目覚めたときには平熱に戻っているという特徴があり、しばしば寝汗(漢方では盗汗といいます)を伴います。膠原病や慢性肝炎などの慢性疾患を持っている患者さんにも時々みられます。陰虚発熱は陽気に対して陰(津液)が不足した陰陽アンバランス状態です。このような場合は不足した津液を補い、場合によっては過剰になった陽気を瀉す生薬を配伍した処方(清骨散など)を用いて陰陽平衡の回復を図ります。