立ちくらみ(起立性調節障害)
主に小児の立ちくらみを起こす起立性調節障害の漢方医学的な病態と治療について概説します。
一般に、立ちくらみは「貧血」とか「脳貧血」と呼ばれることがありますが、正式には起立性調節障害といいます。起立姿勢によって脳に供給される血液が一時的に低下して、クラクラしたり目の前が一瞬暗くなることを指しています。学校の朝礼の時などに、倒れる子供さんの多くがこれで、多くは自律神経がうまく機能せず血液が体の下に留まり、頭への血液の供給が減少することが原因です。
このようなお子さんは朝が弱い傾向があります。ふとんからなかなか起き上がれない、朝食を食べたくない、などです。疲れやすくてゴロゴロするなどといった症状も見られることがあります。
中医学の観点からは、このような子どもさんは気の昇発ができないのです。先のおねしょの項目で述べたように、脾気虚や中気下陥という体質になっていますから、起立時に血液も頭に昇らせる力が不足しているのです。治療は昇陽挙陥といって気を補いながら持ち上げる方法をとります。補中益気湯や昇陥湯といった漢方薬を中心に治療します。
なお、成人や高齢者の立ちくらみでは、糖尿病、パーキンソン病、シャイ・ドレーガー症候群(Shy-Drager症候群)などといった自律神経障害を起こしやすい基礎疾患が隠れていることがあります。このような方にも漢方治療は有効ですが、基礎疾患のチェックは必要です。また、高血圧や心臓病のお薬や抗うつ薬の副作用でも立ちくらみが起こることがありますから、医師や薬剤師に御相談下さい。