京都・漢方専門クリニック 

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胸やけ

胸やけの病態と漢方治療について概説します。

A314_020.jpg その前に西洋医学的な病態についてお話しします。胸やけの多くは胃の内容物が食道に逆流することによって起こります。食道と胃の移行部は噴門(ふんもん)といわれ、食物が食道を下ってくると噴門がスッと緩んで胃に流れ込みます。正常であれば、その後噴門がキュッと締まりますから、いったん胃に入った食物は食道に逆流することはないのです。ところが、この噴門の締まりの悪い人や、胃の動きの悪い人、過食や内臓脂肪がたっぷりついて腹腔内部の圧力が高まっている人、さらには食道裂孔ヘルニアのある人では、この逆流現象が起こってしまうのです。胃液は塩酸を含んでいて強酸性環境なのですが、食道粘膜はこの強酸性に耐えられられず、粘膜の炎症を起こしてしまうわけです(逆流性食道炎)。

 西洋医学の主な治療方法はこの胃酸をお薬で弱めることです。H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤などです。これらの薬を飲んでいる間は胃酸が弱まるので、逆流は続いていても胸焼けは起こらないのです。しかし、薬をやめるとすぐ再発するということがしばしば見られます。また、服用して胸焼けが治まっても、胃酸があることでよく働く胃の消化機能自体が低下してしまい、逆に胃もたれやみぞおちの不快感を訴える患者さんもいらっしゃいます。そのような患者さんには漢方薬がよいと思います。

 中医学に辛開苦降(しんかいくこう)という治療方法があります。辛開とは辛味のある生薬(乾姜、半夏など)で胃の出口を開いてあげることを意味します。苦降とは苦みのある生薬(黄連、センブリなど)で逆流しようとする内容物を舌に降ろしてあげることを意味します。つまり下流のダムを放流して、上流の氾濫を流すというやり方です。代表的な漢方処方は黄連湯や半夏瀉心湯です。