京都・漢方専門クリニック 

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痰(たん

痰(喀痰)の役割と漢方医学的な病態・治療について概説します。

A306_013.jpg 痰は気管支粘膜から分泌される粘い液体で、気道に入ってきたホコリや細菌をくるんで、繊毛運動の働きで咽まで運んでいってペッと吐き出すのです。痰が掃除のモップのようにちゃんと働いてくれていると、私たちの気道は清浄に保たれるのです。この痰の量が多くなったり、粘りけが強くなると、咳や咽の不快感が表れてきます。

 慢性気管支炎や気管支拡張症、あるいは蓄膿症を背景とした副鼻腔気管支症候群では気管支に慢性的な炎症が起こっているので、常に痰が出続けます。1日に何百ccもの痰が出る患者さんもいらっしゃいます。逆に痰の量は少ないのに、いつも咽に引っかかって切れにくいという方もおいでます。

 漢方医学的には痰にもいろいろな種類があります。寒痰(かんたん)は透明でサラサラした痰です。このような粘稠度の低い透明な痰は正確には寒飲(かんいん)といいます。多くは肺や脾が冷えることによって水湿が停滞するためです。小青竜湯や苓甘姜味辛夏仁湯といった漢方薬で治療します。熱痰(ねつたん)は黄色くてドロドロした痰です。肺に湿熱や痰熱が欝滞して生じます。清肺湯のような漢方薬で治療します。燥痰(そうたん)は粘りけが強く咽に絡んでなかなか出てこない痰です。肺の津液(しんえき)不足を背景としていますから、潤肺化痰という方法を用います。貝母栝楼散のような漢方薬を中心に治療します。

 中医学には「脾は生痰の源、肺は貯痰の器」という言葉があります。五臓のうち脾は主に飲食物の消化吸収を司る臓腑なのですが、なんらかの要因で脾の機能が低下している人は、飲食物が充分処理しきれずに、湿が欝滞しそれが痰や飲に変化していきます。生じた痰飲は脾ではなく肺に貯留して痰や咳を起こすのです。ですから、痰の漢方治療に関しては肺だけでなく脾の病態にも配慮して漢方生薬を上手く配伍していかないといけないのです。