京都・漢方専門クリニック 

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むくみ(浮腫)

むくみ(浮腫)の漢方医学的な病態と漢方治療について概説します。

A307_096.jpgむくみの原因は様々で、部位も顔面、四肢、全身など様々です。リンパ節郭清などの手術の後に生じる浮腫は片側の腕や下肢に起こりますが、ここでは一般的なむくみについて解説します。

 まず西洋医学的にむくみを起こす重大な疾患がありますから、その点は必ずチェックしておく必要があります。例えば、心不全、腎不全、ネフローゼ、急性糸球体腎炎、肝硬変などです。しかし、これらは一般的な血液尿検査や普通の診察で大体判別できます。漢方治療を希望しておいでる患者さんは、これらの基礎疾患の治療を受けているにもかかわらずむくみが改善しない方や、あるいは基礎疾患が無いのにむくみを自覚する方です。

 漢方医学的にむくみ(浮腫)も患者さんごとに病態が異なります。共通していることは水の代謝が悪くなっているのですが、その起こり方が異なるのです。五臓(肝心脾肺腎)のうち水代謝に大きな役割を担っているのが、肺・脾・腎の3つです。津液(生理的な水分)に対する布散を高め(宣発)、水液(余分な水分)を人体の排水路に流す働き(粛降)を行うのは肺の役目です。肺の失調(肺失宣粛)ではしばしば顔面、瞼を中心としたむくみが起こりやすい傾向にあります。麻黄、杏仁、石膏、蒼朮、茯苓といった生薬を適宜配伍して治療します。「脾は運化を司る」といい体内の水の運搬に脾は深く関わります。この脾の運搬機能が低下すれば(脾失健運)、主として四肢にむくみが生じ、手足が重だるくなります。黄耆、白朮、大腹皮などの生薬を中心に配伍します。腎は命門の火という一身のボイラー室のような働きで全身を温めて水の代謝を促進します。これを腎の気化といいます。腎の気化機能が低下すると(腎気不化)、多くの場合冷えて水が巡らなくなり下半身を中心に水が停滞します。下肢中心に冷えとむくみが出やすくなります。附子、肉桂、沢潟、猪苓などの生薬を中心に冷えとむくみを同時に治療します。

 その他のタイプのむくみもありますが、いずれにせよ、ここの患者さんの証によって生薬や処方を使い分けることになります。