京都・漢方専門クリニック 

【健康保険適応】 

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当院は中医学を専門とする日本人の漢方専門医が保険診療を行っています。

痔(イボ痔・切れ痔)

痔の漢方医学的な病型とその治療について概説します。

A306_133.jpg 肛門粘膜からイボ状に盛り上がるものをイボ痔といいます。肛門の奥にあって外から見えないものを内痔核、肛門から外に飛び出しているのを外痔核といいます。二足歩行の人間は重力のせいで血液が体の下の方に欝滞しがちですから、四つ足動物にはないイボ痔に悩まされるのです。

 血液の欝滞は漢方医学的には瘀血(おけつ)ですから、痔の治療には桃仁、紅花、牡丹皮、紫根、大黄といったような活血作用のある生薬をよく使用します。しかし、瘀血に湿熱を伴っている場合も多く竜胆潟肝湯など下半身の湿熱を除く漢方処方を加減して用いることもあります。また、もともと胃腸虚弱で低血圧傾向のある人は、気が昇らず下に落ち込んでしまいがちな体質があります。これを中医学では気陥証といいます。気が落ち込むと痔や脱肛、胃下垂、子宮脱といった臓器下垂症状が起こりやすくなります。その場合には、補中益気湯、乙字湯、挙元煎といったような処方を加減して治療します。

 盛り上がりは無いけれども、肛門に亀裂が生じたものを切れ痔(医学用語では裂肛)と言います。切れ痔の原因の多くは、大便が固いことです。固い便が肛門から出るときに粘膜を傷つけるのです。ですから、先ず固い便を改善する必要があります。大腸を潤して便を軟らかくする潤腸作用の生薬(麻子仁、杏仁、桃仁、芒硝など)を中心に処方します。また、豆類、海草類、キノコ類といった食物繊維の多い食品を普段から積極的に食べることも大事です。黒ゴマ(すりゴマにすること)、蜂蜜、桃などは薬膳的に潤腸作用(腸を潤す作用)がありますから、これらも適宜摂取したらいいでしょう。(ただし、糖尿病の人は果物や蜂蜜の過剰摂取は避けて下さい。)

 実は痔のよく効く漢方薬の塗り薬があります。紫雲膏(しうんこう)といって健康保険も適応されます。イボ痔でも切れ痔でも痛みや炎症によく効きます。ただし、飛び出している痔核そのものを無くしてしまうような効果はありません。それでも、痛みや腫れが随分解消されますから、日常生活を楽に過ごせます。漢方専門医の処方に基づいて内服の漢方薬(エキス剤や煎じ薬)と併用すると更に効果的です。