京都・漢方専門クリニック 

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更年期障害

更年期障害とホルモンの関係、更年期障害の漢方医学的な解釈と治療の基本について概説します。

A307_055.jpg 閉経期前後に卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少することによって生じる幾つかの症状の集まり(症候群)のことを更年期障害といいます。ですから婦人科的にはこの卵胞ホルモンを中心としたホルモンの補充療法(HRT:Hormone Replacement Therapy)が治療法の中心となり、内服薬や貼り薬や塗り薬によって人工的にホルモンを補充しますが、この治療で症候がうまくコントロールされている患者さんも多いようです。

黄帝内経 画像.jpg 次に中医学の観点から、更年期障害の起こる仕組みについてお話しします。およそ二千年前の医学書「黄帝内経素問」の最初の章に女性の閉経についての記載があります。何と書いてあるかというと『49歳になると妊娠を司る働きのある任脈と太衝脈が虚衰し、天癸がつきて、月経が停止します。それゆえ容姿も崩れ子も作れなくなるのです。』(七七任脉虚、太衝脉衰少、天癸竭、地道不通。故形壞而無子也。)この一文の中に天癸(てんき)という語句が出てきます。天癸とは父母から受け継いだ先天の精が化生して生殖能力を発揮するように変化した物質のことです。当然、男性にも天癸があります。(男性の天癸がつきるのは56歳と記述されています。)天癸は臓腑では腎に蓄えられているとされ、女性では更年期に急速に衰えるのです。(男性の天癸は徐々に減衰していくため、男性更年期は少ない。)腎における天癸の急速な減少は、陰陽失調を引き起こします。陰陽失調は陽気と陰気(陰血)のアンバランスです。のぼせや冷えといった更年期障害の典型的症状は中医学的に見れば陰陽失調の表現そのものなのです。

 治療は不足した天癸の本になる腎精、陰血、陽気の補充です。婦人科でホルモンを補充するのと似ているといえば似ていますが、個々の患者さんの証によって補腎益精、滋陰養血、補腎壮陽といったように補充すべきものを区別するところが漢方医学の特長です。それぞれに使用する生薬が異なり、補腎益精には熟地黄、鹿角膠、亀板膠、紫河車などが、滋陰養血には阿膠、当帰、芍薬、枸杞子などが、補腎壮陽には附子、肉桂、杜仲、淫羊藿などが用いられます。以上が本治といわれる陰陽調整のための根本治療ですが、個別の症状、例えば、のぼせ、冷え、目まい、不眠、イライラといった症状を緩和するためにさまざまな生薬を用いて気血や心神の調整を行います。婦人科のホルモン補充療法と漢方の併用も効果的です。