京都・漢方専門クリニック 

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ふるえ(振戦)

ここではふるえ(振戦)について、主に本態性振戦の漢方医学的病態と治療について概説します。

A307_121.jpg ふるえのことを医学用語で振戦といいます。西洋医学的に見て振戦には幾つかのタイプがあります。一つは安静時振戦で、体を動かさずにじっとしているときに現れやすい特徴があります。パーキンソン病が代表的で粗大な振戦が、甲状腺機能亢進症では動きの細かい振戦が特徴的です。これと対照的な振戦が企図振戦です。

 何か動作を始めようとするとグラグラ揺れるように振幅の大きい振戦が起こります。代表的な病気は小脳に関連する様々な脳疾患でしばしば、歩行障害を伴います。肝不全や腎不全で現れる羽ばたき振戦という特殊な振戦もあります。本態性振戦はこれらの基礎疾患がない微細で速い震えです。(本態性とは要するに原因がまだよく分かっていないということです。)鉛筆などで文字を書くと筆跡がびりびりと震えているのでよく分かります。若い人にも見られますが、高齢者に症状が目立つ傾向があります。

 中医学の観点からすると、震えるという振戦症状は「風」を表しています。風(ふう)とは六淫(りくいん)の一つです。六淫は風寒暑湿燥火という体外から人体に悪影響を及ぼす邪気のことですが、この六淫の筆頭格が風(=風邪:ふうじゃ)です。風邪の特徴は「動く、揺れる、上に舞い上がる」といった風(かぜ)の属性を持っていて、振戦という症状に当てはまるのです。また、実際に下肢よりも上肢や頭部に振戦は出現しやすいのも風の属性によるものです。上述したように振戦にも幾つかの種類がありますが、本態性振戦やパーキンソン病の振戦は風邪に対する漢方薬で対処することが多いのです。

 振戦をおこす風邪は体外から入ってくるものでは無く、体内から生じる風邪です。これを内風(ないふう)といいます。内風を生じる病態には血虚生風、陰虚動風、陰虚陽亢化風、風痰上擾といったいくつものパターンがあり、患者さんによって様々です。証に応じて七物降下湯、大定風珠、天麻鈎藤飲、鎮肝熄風湯、半夏白朮天麻湯などの漢方薬を中心に加減して処方します。