京都・漢方専門クリニック 

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生理痛(月経痛、月経困難症)

生理痛(月経痛、月経困難症)の起こる中医学的な仕組み、病態、および漢方治療について概説します。

A307_049.jpg いわゆる生理痛(月経痛)は多くの女性が経験するものですが、日常生活に支障を来すような激しい疼痛の場合に月経困難症と呼ばれます。下腹部の痛みは月経時あるいは月経の1〜3日ぐらい前から起こります。腰痛、頭痛や吐き気を伴うこともあります。月経前にイライラしたり憂鬱になったりする月経前緊張症(月経前症候群)を伴うこともあります。

A307_073.jpg 中医学の観点から生理痛が起こる仕組みについて説明します。子宮の周囲の骨盤腔は静脈叢(じょうみゃくそう)といわれる血管の豊富な組織があり、中医学ではこれを血室と呼んでいます。

 一方、「肝蔵血(肝は血を蔵す)」というように肝という臓腑は血をプールしています。普段は肝に蓄えられている血(肝血といいます)が月経時に子宮や血室に移動して月経に供えるわけですが、このとき相対的に肝血が少なくなります(相対的肝血虚)。肝血が不足すると、肝の疏泄機能(気をスムースに巡らせる作用)が失調するのです。つまり肝は血で満たされていて、初めて気を流す役目を果たすことができる臓腑なのです。ですから、もともと肝血虚という肝血が不足している人や、もともと心理的ストレスで肝気鬱結となり疏泄が失調しがちな人では、生理痛が激しくなってしまうのです。陽虚や寒滞血脈といった冷えによって、気の巡りが悪くなっている患者さんでも、このような状況で生理痛が強くなります。

 ですから、中医学に基づいた生理痛の漢方治療では①不足した肝血の補充、②気血の停滞の改善、③併存する陽虚や寒邪への対処、といったようなことを行います。①の肝血を補うためには当帰、芍薬、熟地黄、阿膠などを、②の気血を巡らせるためには柴胡、香附子、烏薬、桃仁、紅花などを、③の陽虚や寒邪に対処するために炮附子、乾姜、桂皮、縮砂、小茴香などを、患者さんの証に応じて適宜配伍します。さらに、延胡索、我朮といった止痛作用のある理気活血の生薬を配伍して効果を高めます。

 ずっと鎮痛剤やピルを飲み続けることが不安になっている患者さんも少なくないと思いますが、そのような場合は漢方治療をお勧めしたいと思います。