京都・漢方専門クリニック 

【健康保険適応】 

 診察予約 075−352−3737


当院は中医学を専門とする日本人の漢方専門医が保険診療を行っています。

冷え症(冷え性)

冷え症の漢方医学的な病態と治療、一般的な養生方について概説します。

A307_052.jpg 冷え症は女性に多く見られます。中医学の陰陽学説では男は陽で女は陰ですから、女性はもともと冷えやすい傾向があります。西洋医学的に冷え症を起こす代表的な疾患は、慢性甲状腺炎(橋本病)に伴う甲状腺機能低下症です。まれに脳下垂体ホルモンの低下でも酷い冷え症になります。しかし、実際にはホルモンの異常を伴っていない冷え症の患者さんが大部分なのです。ただ、胃腸虚弱の症状があったり、女性では月経困難症を伴っていたりする場合が多いようです。

 漢方医学的に見た冷え症はいくつものタイプがあり患者さんによって病態が異なります。例えば手が冷えるという症状一つとっても、指先が冷える人、手の甲が冷える人、手の平が冷える人、全部冷える人と幾つものパターンがあり、それぞれに病態が異なります。指先が冷える人は血脈に沿った気血の供給が途絶えています(血脈阻滞)から、黄耆、当帰、川芎といった巡りを促進する生薬を中心にして処方します。手背や手掌が冷える場合は、それぞれの部位に皮気(皮膚表面を走行する気)の供給が少なくなっていることを反映します。それぞれ、細辛、附子、栝楼根や乾姜、牡蛎などの生薬を病態に応じて配伍します。

 手足だけでなく全身が冷える人もいます。一つには腎陽虚といわれるタイプで、命門(めいもん)という腰の奥にある人体のボイラー室の火力が低下した状態です。治療は補腎壮陽で主薬は附子になります。ボイラー室の火力は問題がないのに、体内から体表に気が出てこられないタイプ(膈不利)もあります。柴胡、半夏、栝楼根などを病態に応じて配伍し、全身に気がスムースに供給されるようにします。

 最後に、冷え症の人の一般的な養生方について記しておきます。


食事について
パン食を避け、朝食は温かい御飯(雑穀・玄米を少し混ぜることが望ましい)、味噌汁、小魚を基本とすること。
御菓子など甘いものを控えること。(砂糖など糖分を摂取すると脂肪が燃焼しなくなり、冷え症がなかなか治りにくくなる。漢方的にも腎気を弱めてしまう。)
バナナ、牛乳、生トマト、サラダなど体を冷やす飲食物を控えること。
野菜や果物は国内で採れる旬のものを。サラダでなく温野菜で。
冷やした茶、コーヒーは避け、極力温かくして飲むこと。(せいぜい常温)


衣服について
スカートよりもズボンを。(スカートの場合はストッキングで保温を。)
 →下半身が冷えると命門の火力が衰えます。


生活リズムについて
1日30分程度の歩行をすること(通勤、通学でも可)
夜更かしを避けること(遅くても23時までには床につく。)
朝寝坊しないこと