京都・漢方専門クリニック 

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第36話 風邪に葛根湯? 〜正しく使えば効果抜群〜

2006年12月8日金曜日(高知新聞連載より一部改変)

イラスト 高知新聞社 提供   

中医学36・葛根湯.jpg 江戸時代、風邪でも頭痛でも肩凝りでも何でもかんでも、葛根湯(かっこんとう)を何とかの一つ覚えみたいに処方する医者を皮肉って、「葛根湯医者」と呼んだそうです。さすがに、今はそんな医者はいませんが、それぐらい昔から日本人にはなじみのある漢方薬ということでしょう。

 保険がきく医療用エキス製剤にもありますし、町の薬局でも顆粒状のものとか、のみやすいアンプルにしたものが市販されています。「風邪のひき始めに葛根湯」と宣伝されていますが、本当は正しくありません。風邪のひき始めにもいろいろあるからです。しかし、的確に服用すれば数時間で風邪が治ります。それぐらいよく効きます。

 葛根湯を正しく使ってもらうためにそのポイントをご説明しましょう。第一に悪寒。これが一番重要です。風邪のひき始めから悪寒がなかったり、逆に熱気がしたりのどが痛かったりするような風邪は葛根湯では治りません。

 第二に無汗。汗をかいていないことです。よく分からないときには手を脇の下に当ててみてください。サラッとしていたら無汗です。ジトッとしていたら葛根湯はいけません(桂枝湯(けいしとう)という処方の適応です)。

 第三に頭痛や項の痛み、あるいはこわばった感じがあることです。この、悪寒、無汗、頭項痛の三条件をすべて満たしていれば、葛根湯がよく効きます。
 ただし、狭心症や心筋梗塞、バセドウ病のある人は服用を避けてください。状態が安定していれば処方しても差し支えないこともありますが、慎重を期すべきです。葛根湯には麻黄(まおう)という生薬が使われていますが、主要成分のエフェドリンはこれらの病気にはよくないのです。

 葛根湯は超短期決戦の処方です。服用したら布団に入って温まりましょう。眠っている間にどっさり汗をかいた後に、体が軽くなっているのを感じると思います。汗とともに「寒邪(かんじゃ)」が追い出されて治った証しです。汗をかいた後もまだ、治り切っていないようならその場でもう一服のみます。

 ただし、せき込んできたり、体が火照ってきたり、気分が悪くなってきた場合には、もう葛根湯は効きません。これは残念ながら寒邪が体のより深い部分に侵入して化熱してしまったのです。他の処方への切り替えが必要ですので、医師や薬剤師に相談しましょう。

 葛根湯は白湯(さゆ)で服用します。生ものや冷たい飲食物は避けないと効果が著しく減弱します。逆に熱いうどんやおかゆを軽く食べてから寝ると、汗とともに寒邪を追い出す葛根湯のパワーが増強されます。お試しあれ!