京都・漢方専門クリニック 

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第11話 朝の目覚め 〜まず「筋」を動かそう〜

2006年6月16日金曜日(高知新聞連載より一部改変)

イラスト 高知新聞社 提供   

中医学11・早起き.jpg 引き続いて寝起きについてお話しします。
 夜更かしが「腎」を損ねることは前回お話ししました。ではいつ布団に入れば良いのでしょうか。理想的には亥(い)の刻が始まる夜九時です。「そんなの無理!」って思うでしょ。ですから妥協して夜十時までには布団に入りましょうねと言っています。

 眠れないときにはどうするか。布団の中でタイマー付きラジオを「静かにボーッと」聴くことをお勧めしています。目と頭は使わないことです。就床前に過ごす居間や寝室の蛍光灯を白色から黄色っぽいものに取り替えるのも効果的です。昼色光の白色蛍光灯では目と頭が昼間と錯覚し心が高ぶってしまいがちです。夜勤がある人は仕方ありません。せめて、休日や夜勤の無い日には早く床に入ってもらうこと、夜食を控えめにすることをお勧めしています。見たい深夜番組はビデオで予約録画して夕方や休日に見るようにお勧めしています。脈診のときなどに患者さんから「先生、テレビの『チャングムの誓い』みたいですね」と言われることがありますが、夜九時に布団に入る私はチャングムを見たことがないので「はあ…」とお答えするしかありません。

 朝何時に起きるか。これは個人差もありますが、早く寝ればその分早く起きられます。私は寅(とら)の刻の午前四時です。「筋」に指令して活動を開始する「肝」という臓は寅の刻から活発になってきます。早朝の散歩やラジオ体操は実に理にかなった養生です。散歩もラジオ体操も激しい運動ではありませんね。筋肉ではなく筋(=腱)と関節)を動かすことが主体です。これは五臓では「肝」を促進し、一日の始まりを全身に呼びかけることになります。

 五行(木火土金水)では「肝」は木に属します。木は方角では東を表します。太陽が昇ってくる方向です。ですから散歩ができない人は、せめて朝は東の窓を開けて朝日を浴びましょう。これも同じ意味があるのです。もちろん、朝日を浴びながら木々の間を散歩するのが最高です。一つ例を挙げましょう。神社の神官さんの肌と声は張りがあってきれいだと思いませんか?もちろん、飲食の不摂生をしないことも理由の一つですが、早朝から起きて榊(さかき)の水を換え、太鼓をたたきながら祝詞(のりと)を挙げ、境内を箒(ほうき)で掃き清めます。

 つまり、一日の始まりとして「筋」を動かし、声を発して、積極的に「肝」を呼び覚ましているからなのです。いつまでも若々しくありたいでしょう?早寝早起きにしましょうね。