京都・漢方専門クリニック 

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第20話 問診とは 〜病態を多面的に検証〜

2006年8月18日金曜日(高知新聞連載より一部改変)

イラスト 高知新聞社 提供   

中医学20・問診.jpg






 医師が患者さんに問いかけることを問診といいます。これは西洋医学でも大切です。漢方の問診が西洋医学の問診と異なる点は、内容が細かいことです。もし、患者さんが頭痛を主な症状に訴えて受診されたとしますと、例えば次のような問診をします。

いつからですか?
どんな感じの痛みですか?
起こり始めた季節は?
頭のどのへんが痛みますか?
吐き気を伴いますか?
めまいを伴いますか?
雨天時にひどくなりますか?
精神的ストレスでひどくなりますか?
イライラして逆上しますか?
眼精疲労や眼痛を伴いますか?
月経時にはひどくなりますか?
骨折や内臓損傷のような大きな外傷や中絶の経験はありますか?
鼻づまりは?
          などなど。

 ひとつひとつ問診していたら時間がなくなるので基本的なところは問診表を書いて頂いています。頭痛という訴えを念頭に様々な問いかけを通じて、考え得る漢方医学的な病態を一つ一つチェックしていく訳です。例えば問診の結果、患者さんは額から眉間にかけての頭痛があり、雨天でひどくなり、クーラーにあたると悪化する鼻水と鼻づまりをともなうということが分かったとします。これは、寒湿の邪気(クーラーと雨天で悪化する水様性鼻漏)が、足陽明胃経(額から眉間の部位を走行する気の流れのルート)に停滞し、肺気の失調(鼻づまり)を伴っていると解釈されます。

 ですから、この場合には足陽明胃経の寒湿邪気を除いて肺の気を回復させてあげれば良いので、白芷・防風・辛夷といった生薬を主体にし、さらに患者さんの五臓六腑や陰陽気血の状態に合わせて数種類の生薬をブレンドします。このように、頭痛を主訴に来院しても、やれ食欲は、大便は、睡眠は・・・などと一見関係ないような質問をさせていただく必要があるのです。

 多忙とファーストフード化の現代社会の中で、エキス剤といわれる飲み易い顆粒状の漢方薬が多く使われていますが、これらはすべて生薬の種類も配合割合も固定されています。しかし、個々の患者さんの顔立ちや体質がそれぞれ異なるように、また同じ患者さんでも季節や食べ物、疲労度などでも常に変化するものですから、本来の漢方の処方というものはまさに臨機応変。生薬一つ一つを吟味しさじ加減を行うオーダーメイド医療なのです。