京都・漢方専門クリニック 

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第15話 長夏の養生 〜体の冷やし過ぎに注意〜

2006年7月14日金曜日(高知新聞連載より一部改変)

イラスト 高知新聞社 提供   

中医学15・冷過ぎ.jpg 梅雨明けすれば夏の盛りになりますね。一年でいちばん暑い時季、皆さんはどのように過ごされますか。

 中医学は季節を重視します。梅雨が明けるころの季節は長夏といって、梅雨前の夏と区別しています。夏も長夏も気温が高いことは同じですが、長夏は湿気が多いことが特徴です。湿と熱が合わさった湿熱の天気が続くことが長夏の特徴です。

 湿熱がかかわる病気はこの時季に悪化しやすいのです。例えば、湿疹など発赤とジクジク感をともなう皮膚病や水虫が代表的です。現代日本の長夏では、熱よりも湿の方がより問題です。なぜなら、多くの職場や家庭では空調が入っていますし、むしろ体は冷える傾向にあるからです。

 女性は男性に比べて「陰」に偏っていますから、職場の過度の冷房で体調を崩しがちなのは女性です。男性も女性も冷蔵庫で冷やした飲み物をたくさん飲んで、胃腸を冷やしています。このように、現代の長夏は体の外からと内からの冷えに、さらに湿気が加わって、知らず知らずのうちにさまざまな病気を引き起こすようになってしまったのです。

 特に、冷たい飲み物の取り過ぎには要注意です。五臓のうち「脾」(消化器系)を蒸気機関車のボイラーに例えれば、石炭が食物で、機関車の馬力が「気」にあたります。「脾」は食物から「気」を作り出す重要な臓腑なのですが、冷たいものをたくさん飲むということは蒸気機関車のボイラーに冷水を浴びせるようなもので、そのうちに機関車の馬力が落ちてきます。

 七月、八月の暑い時季に冷たいものを飲み過ぎると、体の中が水分(湿気)過剰の上に「気」がつくられてこないわけですから、秋が近づくとくたびれたスポンジが水を含んだように、体が重だるくなってしまうのです。

 また、体に湿気が停滞していると鬱滞して部分的には熱を持ってくることがあります。内蔵は冷えているのに、皮膚や関節などの抹消の組織で湿熱が起こってくる寒と熱が同居した状態です。これが、全身的なだるさに加えて、湿疹や水虫の悪化、慢性的な関節などの痛み(多くは腫れと熱感を伴います)などの悪化の要因となります。

 適度に暑さをしのぐことは必要ですが、過度に体を冷やさないことが現代の長夏の養生法として大切なのです。