京都・漢方専門クリニック 

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第23話 アトピー性皮膚炎 〜消化器系を健やかに〜

2006年9月8日金曜日(高知新聞連載より一部改変)

イラスト 高知新聞社 提供   

中医学23・アトピー.jpg アトピー性皮膚炎はかゆみのある湿疹を主体とした発疹が悪化したり、軽減したりを繰り返す皮膚病です。

 乳幼児期はジクジクした赤みの強い発疹が主で、学童期、成人になるにつれてガサガサして硬くなってきます。この病気は全身病であり、生活習慣が大きくかわっていると中医学では考えています。

 成人や年長児のアトピー性皮膚炎の皮膚は表面が乾燥し、つやがないのですが、逆に皮膚の下(肌)は湿気でジトジトしていることが特徴です。その証拠にかきむしったあとはじっとり湿ります。湿邪(湿気の邪気)が肌にたまり、本来の栄養分である気血が皮膚表面に達することを邪魔しているのです。ですから、ガサガサ乾き(血虚)、皮膚感染を併発しやすく(気虚)なります。

 「肌」の湿邪はどうしてたまるのかというと、多くの場合、五臓のうち脾、現代医学的には消化器系に問題があるからです。「脾は運化を司る」といい、脾が過剰な負担を強いられると運化機能が果たせません。となると、飲食物から得た、本来なら栄養素や水分になるはずのものが運ばれずに停滞します。実はこの「肌」という部位は中医学的には脾が支配する領域なのです。

 ですから、アトピーの治療や予防(妊婦でも)では脾を健やかにすることが必須です。「脾は湿を悪む(にくむ)」といいます。現代日本には湿邪になる食であふれています。アトピーの養生のため子どもと妊婦を念頭に湿を避ける食事の留意点をお教えしましょう。

 まず、スポーツ飲料など低分子の糖分(砂糖、果糖、ブドウ糖など)が入っている飲み物を避けることです。芋、穀物のようなでんぷん質は糖分子が無数につながったものですが、これは湿邪をつくりませんので大丈夫です。次に、乳製品を控えめにすることです。カルシウムが豊富という利点の一方で、湿を助長する性質があるからです(逆にこの性質は世界の乾燥地域の食として利用されています)。

 日々の食事は和食が基本ですが、パンにしたいときは牛乳や砂糖の入っていないものにします。連載の第十二話に書いたように、朝の和食は五臓のうち肝と腎をつよくしますが、湿をためないことから脾にも良いのです。

 さらに、油物を控えめにすることです。スナック菓子を含め揚げ物は湿熱をつくります。特に妊婦は子宮の中に胎児を抱えています。赤ちゃんは「赤」というように陽気が強いので母体は熱に偏りがちで、羊水をためているので「湿」にも偏ります。
 油物や辛い物を取り過ぎると母体の湿熱が胎児に移行し、「胎熱(たいねつ)」になります。これが多くの場合、新生児や乳児期からの発疹の素地になるのです。