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第35話 冬の養生 〜栄養取って体力温存を〜

2006年12月1日金曜日(高知新聞連載より一部改変)

イラスト 高知新聞社 提供   

中医学35・冬の養生.jpg 皆さんは十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)をご存知ですか。今年は戌(いぬ)年で来年は亥(いのしし)年と言うように、十二支にはなじみがあるでしょう。

 子(ね)丑(うし)寅(とら)卯(う)辰(たつ)巳(み)午(うま)未(ひつじ)申(さる)酉(とり)戌(いぬ)亥(い)の十二支は、「草木も眠る丑三つ時(午前二時半―三時のこと)」というふうに時刻を表す場合にも用いますが、もともとは地上の陰陽の変化を表す符号ですので、「地(ち)支(し)」とも言います。

 甲(こう)乙(おつ)丙(へい)丁(てい)戊(ぼ)己(き)庚(こう)辛(しん)壬(じん)癸(き)の十種類の符号を十干と言い、天の陰陽の変化を表すので「天(てん)干(かん)」とも言います。昔、学校の通信簿の成績評価には甲乙丙とか使っていたのですが、本来の十干に優劣はありません。地支と天干を併せて干支(かんし)と言います。

 なんで、こんな小難しいことを書くかというと、「冬」という季節の本質が十干に表れているからです。冬は五行(木火土金水)では水に相当します。季節の変化は天の陰陽の変化ですから、十干で壬(みずのえ)と癸(みずのと)がこれに当たります。

 「みずのえ」は水の兄(え)、「みずのと」は水の弟(と)です。兄は陽、弟は陰を表しますから、壬は陽水、癸は陰水という符号です。中医学の臓腑(ぞうふ)の考え方では膀胱(ぼうこう)が壬に、腎が癸に相当しています。妊娠の「妊」の文字はおんなへんに壬と書きます。おなかに胎児を宿しているということです。このように壬という字は「はらむ」とか「ためる」という意味を持っています。

 癸は元来の字義は異なりますが、「黄(こう)帝(てい)内(だい)経(けい)」という二千年前の医書には、「女子、二七にして天(てん)癸(き)至り、任脈(にんみゃく)通ず」とあります。「天癸至る」とは初潮のことで、「任脈」とは子宮に通じる経(けい)絡(らく)(気の流れ道)のこと。つまり、女性は十四歳で初潮がきて妊娠できるようになると言っているのです。

 ここで「天癸」とは、五臓のうちの腎に蓄えられた「先(せん)天(てん)之(の)精(せい)」を指します。先天之精とは両親から受け継いだ生命エネルギーのエッセンスのこと。これが百パーセントに達すれば月経が始まりますよという意味です。

 ですから、壬癸に相当する冬の季節は、腎の蓄える機能(封(ふう)蔵(ぞう))を大切にする養生、つまり栄養を取って体力を温存することが大切です。春や夏のように動き回って代謝を亢進(こうしん)させるのはよろしくないのです。

 蛇やクマは冬眠しますし、スポーツ選手も冬場のトレーニングは基礎体力の充実が主体です。このバランスを誤ると春になって体調を崩します。もうすぐ忘年会の季節ですが、夜更かし、飲み過ぎはほどほどにしないと腎を衰えさせることになります。