京都・漢方専門クリニック 

【健康保険適応】 

 診察予約 075−352−3737


当院は中医学を専門とする日本人の漢方専門医が保険診療を行っています。

第1話 漢方医への道 ~人生変えたアドバイス~

2006年4月7日金曜日(高知新聞連載より一部改変)

イラスト 高知新聞社 提供   

中医学1・漢方医.jpg 読者のみなさんは「中医学」ってご存知ですか。中国伝統医学のことです。漢方薬と言った方が身近に感じられるかもしれませんが、鍼灸、薬膳、養生なども中医学の分野です。来院される患者さんの多くは既に西洋医学の検査を受けたものの原因不明であったり、西洋医学的な治療に満足できなかった方です。

 私が卒業したのは栃木県にある自治医科大学というところです。なんと学費は無料!都道府県が負担してくれます。そのかわり卒業後9年間は僻地診療所を含む出身県の公的医療機関で働かなければいけません。私は徳島の出身で徳島県民の血税で医者にさせて頂いたことになり、九年間の御奉公は終えたとはいえ隣の高知にいるのは郷里に不義理をしているようで本当のところちょっと心苦しいんです・・・。私の生家は明治以前から薬屋を営んでいて、納屋にはガラス瓶入りの古い生薬のサンプルが残っていました。でも大学で教わることは西洋医学のみ。研修医になってからはせっせとエコーや内視鏡の習得に励み、救急当直では馬車馬のように走り回って濡れ雑巾みたいにクタクタになり、漢方なんぞはますます頭の中から消えていきました。

 ところが、医者になって3年目に派遣されていた徳島県立海部病院に、当時の高知医大からY先生が新院長として赴任されてきました。Y院長は非常に広い内科の知識をお持ちの臨床家でもありました。ある時、シェーグレン症候群という唾液や涙が出なくなる病気の患者さんの治療に困っていたところ、院長は麦門冬湯という漢方薬を使ってみてはとアドバイスして下さいました。この時のY院長との出会いが、先祖がやっていたことに回帰していくきっかけになったように思います。その時から高知とはちょっぴり縁があったのかもしれません。長い人生には、後になって振り返ってみると伏線のような出来事や出会いがあるように思います。この連載では、漢方や養生といった中医学の“効用”と、それに纏わるいろんなエピソードなどの“雑事”を紹介しながら、皆さんに中医学を少しでも身近に感じて頂けたらと思っています。