京都・漢方専門クリニック 

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第17話 中医学の診断 ~望聞問切が頼り~

2006年7月28日金曜日(高知新聞連載より一部改変)

イラスト 高知新聞社 提供   

中医学17・診察.jpg 今まで病院や診療所で医師に見てもらったことがない人は別として、皆さん一度や二度は聴診、おなかの触診を受けたり、整形外科では関節を触ったりハンマーで膝を叩かれたり、血液など各種の検査を受けられたことがあるでしょうから、西洋医学の診察はイメージし易いでしょう。

 漢方の診察は医師の五感が頼りです。もちろん、西洋医学的な検査データを参考にすることもありますが、漢方の診断(弁証)には大きく影響しません。そもそも、漢方の診断名は西洋医学の病名とは別です。たとえば、西洋医学で気管支喘息と診断されている患者さんに対して、漢方的には例えば「腎不納気」などと弁証されたり、同じく、てんかんの診断に対して例えば「肝風内動」などと弁証されます。

 西洋医学とは全く異なる医学理論に基づいて、異なる視点から患者さんの病を捉えているので、診断名も専門用語も異なるのです。そもそも、喘息は肺の病気、てんかんは脳の病気としたものですが、「腎」や「肝」などという言葉が出てくること自体が、患者さんのみならず西洋医学の医師にも理解困難なのです。このことは漢方医学の特徴をよく表しています。つまり、喘鳴(ゼーゼー)や痙攣といった症状は体の中の病的な変化が表に現れたに過ぎないのであって、体内の病的変化の本質を把握してこれに対処することを治療の目的としているのです。ですから、漢方には西洋医学のような気管支拡張薬や抗痙攣薬はありません。漢方薬や鍼灸で五臓や陰陽気血の調和を図ることが治療の根幹であって、軽視しませんが症状を抑えることは枝葉末節に過ぎないのです。

 かといって、漢方医学が西洋医学より優れているなどと言うつもりはありません。見方の違いです。トンガリ帽子を真上から見たら円形に、横から見たら三角形に見えますが、本当は三角錐です。いわば西洋医学は縦から、漢方医学は横から見ているのであって、患者さんも病も多面的に捉えた方が良いのです。

 漢方医学の具体的な診察は、望診(顔色、表情、舌などを観る)、聞診(声調を聞き分けたり、体臭を嗅ぐこと)、問診(患者さんの話を聞くこと)、切診(脈やお腹、ツボなどに触れること)の四つにまとめられるので、四診と呼んでいます。四診で得た情報を漢方医学理論に当てはめて、総合的に証を導き出して処方を決めるのです。