京都・漢方専門クリニック 

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第4話 中医師から学ぶ ~教科書にない視点財産に~

2006年4月28日金曜日(高知新聞連載より一部改変)

イラスト 高知新聞社 提供   

中医学4・セミナー.jpg 徳島の僻地診療所に勤務しながら、週末は飛行機で東京に行って、学会のセミナーに参加したり、北京の大学から来日していた高名な教授クラスの先生方から直接ご指導を受けました。生徒のほとんどは私のように仕事を持っている医師や薬剤師でした。

 非常に思い出深い教授がおいでました。「いみじくも学問をしようとするならば遊ぶなんぞもっての外。」ということを当然のことのようにおっしゃるのです。これは、マイッタ・・・講義を受けていた我々日本人はこの言葉に呆気に取られてしまいました。しかし、この教授も含め中国から来日された先生方は毎回、多数の手書きの資料をもとに一所懸命講義や実習を指導してくれました。これらの資料は教科書に書いてあることとは切り口が違う点が多々あり貴重な財産になりましたが、講義のたびに準備してくる労力は大変なものだっただろうと思います。

 このような先生方の学問に対する厳しさと、学ぼうとする者に対する誠意は、言葉を超えて生徒である我々日本人医師や薬剤師に伝わってきました。今になって思うに、先生の言わんとしたことは遊ぶなということではなく、学ぶことに喜びを見出しなさいということではなかったかと思います。学会のセミナーも含めると僻地診療所勤務の傍ら5年間東京に通い、最後には北京の本校の附属病院で研修を受けました。授業料、研修費、交通費、ホテル代、本代…注ぎ込んだお金はかなりの額になってしまいました。

 これで、漢方医への道が見えてきて、まっすぐ道を進んでいこうと思っていたある日の土曜日。徳島空港のロビーで東京行きの飛行機の出発を待っていた時、徳島大学のS先生とバッタリ出合いました。S先生は私が医者になりたてほやほやで、研修医として大学病院でお世話になったときに病棟医長をされていました。「篠原君、どこ行っとるん?」「週末に中国医学の勉強に通ってます。」「いずれ漢方を専門にするにしても、若いうちは医学の研究をして科学的な物の見方も出来る漢方医になったほうが良いと思うよ。」とS先生の研究グループに誘って下さいました。S先生の研究グループの主要テーマは肺癌の癌抑制遺伝子で、およそ漢方とは何の関係も無いと思われましたが、恩師の勧めでもあり漢方医への寄り道を歩むことになったのです。