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第26話 絶品の徽州料理 〜日本人好みの「うまみ」〜

2006年9月29日金曜日(高知新聞連載より一部改変)

イラスト 高知新聞社 提供   

 世の中おいしい話に乗ってはいけないと言いますが・・・今回は、本当においしい話をします。

 中国四大料理といえば北京、上海、広東、四川です。しかし、私は徽州料理がはるかにおいしい。と言うか、日本人の舌に合うと思います。徽州とは高知県の友好提携先の安徽省の黄山の南側の地域です。徽州料理が日本ではほとんど知られていないのはもったいない話です。

 四年前、地元の安徽中医学院の先生に連れて行っていただいた省都•合肥市内の徽州料理の専門店で食べた味は、生まれてこの方口にしたあらゆる東西の料理の中で最高においしいものでした。

徽州名物 臭桂魚.jpg 他の四大料理との違いは何かと言うと「うまみ」です。うまみとは複雑なアミノ酸を主体とした、日本人の味覚が最も大切にする味です。代表的な徽州料理の一つ「臭桂魚」は体長三十センチほどの川魚【写真】です。

 大きな皿に載せてウェートレスがドアから入ってくると、ぱあっと部屋中に臭いにおいが立ち込めました。何も知らずにこのにおいをかぐと、恐らくほとんどの人は箸をつける気がしなくなるでしょう。しかし、事前情報でこの料理は「絶対食うべし」と、数カ月前にこの店で食べた日本人の知人から聞いていましたので「よし来た」と迷わず箸を付けました。

 うまい!魚を発酵させた上で味付けしていて、絶妙なアミノ酸の旨味です。他にもいくつもの徽州料理を食べましたが、例えば肉団子スープのような一見どこの中華料理でもありそうなものでも、うまみが凝縮されています。

 だし汁は何か分かりませんでしたが、とにかくおいしい。徽州料理は油っこくない、辛くない、甘くない。日本人の味覚神経が大喜びするような「うまみ」でした。実はその後、黄山の山の上のホテルのレストランでも臭桂魚が出てきましたが、これは駄目。同行していた通訳の中国女性が臭い、まずいと怒っていました。やっぱり中国でも、一見客相手の店で出される料理はこんなものなのでしょうか。

黄山旭日.jpg 黄山のホテルに一泊し夜明け前に目を覚まし、細い坂道を登って大きな岩の高台から日の出を眺めました。黄山は雲に隠れて日の出が見えないことが多いとのことでしたが、私の場合は幸運でした。

紫色に染まる東の雲の間から朝日が差して、松の生える黄山の岩肌を照らしました。東から南に目を移せば、そこは朝露に覆われた徽州の地。何百年もの間、多くの名医を生み出してきたこの地にしばし思いを寄せていました。