京都・漢方専門クリニック 

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肺気腫

 肺気腫の病態と漢方治療について解説します。

 喉には気管が通っています。気管は左右の気管支に分かれてそれぞれ左肺と右肺につながり、更にどんどん分岐していって最終的に肺胞という非常に小さい空気の部屋(袋)に至ります。ここで空気中の酸素を血液中に取り込み、血液中の二酸化炭素を肺胞内に放出します(ガス交換)。肺気腫ではほとんどの場合長年の喫煙が原因でこの肺胞の壁が破壊されていって、隣の肺胞と繋がってしまいます。さらに壁がどんどん壊れていくと微細は部屋が大きな風船状の空間に置き換わっていきます。中に空気の入った風船(気腫)が肺の中を樹木の枝のように通っている細い気管支(空気のダクト)を圧迫してしまうために、気管が狭くなるのです。すると吸った空気を充分吐き出せなくなって、さらに肺に空気がたまり肺全体が膨張していくわけです。ですから、肺気腫が酷くなると胸全体がビール樽のように張り出してきます。

 肺気腫の主症状は息切れです。痰を伴うこともありますが、慢性気管支炎や気管支拡張のように多量にでることはありません。むしろ少痰や無痰のことが多く、喉にしつこく痰が絡んだような違和感が続く人もいます。肺気腫の呼吸機能の低下は徐々に進行していきますから病状の酷さの割には症状が軽く、息切れを自覚するようになった頃には既に呼吸機能は相当悪くなっている場合が多いのです。検診などで早期に診断されて禁煙ができれば軽症で済むのですが、程度によっては在宅酸素療法を行い、自宅で酸素を吸って生活をすることになります。

 肺気腫に対する漢方治療の主目標は、息切れを改善して日常生活を楽に送れるようにすることです。残念ながら漢方薬でも破壊された肺胞を元に戻すことはできません。多くの場合、肺腎を中心に消耗していますので、黄耆、人参、麦門冬などで肺の気陰を補い、五味子、熟地黄、蓮肉などで補腎納気を行います。息切れが強い場合には木防已湯加減を併用して肺気の昇降を整えたり、燥痰(絡んでなかなか切れない痰)がある場合には貝母、栝呂仁、沙参などで肺を潤しながら去痰します。また、肺気腫の患者さんはしつこい便秘をともなうこともしばしばです。お通じを整えることも重要ですので、漢方処方でも配慮します。