京都・漢方専門クリニック 

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脂肪肝

 最近の脂肪肝に対する認識と、漢方治療、食事療法と運動療法について概説します。

 脂肪肝に対する認識は一昔前と変わってきました。昔は肝臓に脂肪がたまるだけの簡単な病気と考えられていました。しかし現在では、一部の脂肪肝が慢性肝炎や肝硬変、さらには肝臓癌にまで進展する病気であるとの認識に至っています。定期的にエコーや血液検査を受けながら、食事と運動療法を積極的に行うことは漢方治療の有無にかかわらず大切です。

 漢方で脂肪肝を治療する場合には、肥満や内臓脂肪の蓄積を起こしやすい体質の改善を考えます。中医学的に脂肪蓄積と関係が深い病態は痰飲(たんいん)です。西洋医学でいう痰は気管支からの粘った分泌物ですが、中医学でいう痰とか痰飲は全身に生じる粘調な不消化物で、血管の中に生じたら動脈硬化を起こし、皮下組織に貯まったら皮下脂肪に、肝臓にたまれば脂肪肝というふうになります。痰飲の状態が長きにわたると、痰飲によって気血の巡行が妨げられるため、二次的に瘀血が生じてきます。この状態を痰瘀互結と言いますが、中医学的には脂肪肝炎から肝硬変、肝臓癌への進展と深くかかわっていると思います。

 痰飲を除くためには半夏、茯苓、枳実などといった生薬を用いますが、過食や早食い行動の背景にある胃熱を冷ますために黄連、竹筎、知母といった生薬を併用することが多くなります。胃熱がとれれば多くの場合、過食行動は軽減しますが、精神的ストレスが背景になっているいわゆるストレス食いでは、柴胡など別の生薬を併用する必要があります。
このように漢方薬で治療のサポートはできますが、何といっても食事療法と運動療法を行って、体重を減らして脂肪肝を改善することは必要です。脂肪肝という病名に惑わされて、脂肪(油)を食べないようにしたらいいと早合点しないようにして下さい。パン、菓子、ファーストフード、清涼飲料(糖を多量に含む)、ビールなどを控えることがより重要です。ご飯も小さい茶碗に軽く一杯までに抑えましょう。魚(ω-3系脂肪酸)やオリーブオイル(ω-9系脂肪酸)といった良質の脂肪はむしろ適度に摂取すべきす。肉類やサラダ油は(ω-6系脂肪酸)炎症を助長したり動脈硬化を促進し血流を悪くしますから、極力控えることをお勧めします。また、漢方の薬膳の観点から痰飲を除くには、キノコ類(シイタケ、えのき、しめじ等)や海藻類(昆布、ワカメなど)の摂取を普段から心がけることもお勧めします。